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なぜか忘れられないシーン

ものすごく暑かったあの夏。浅草をひとり歩いていると、炎天下で歪んだ空気の中で、ひたすら謝り続けるサラリーマンを見つけた。よほどのミスをしたのか、電話口の相手の顔が浮かぶほどの謝りっぷりであった。携帯電話を耳に押し当て、一語たりとも聞き逃しませんという姿勢で、そこに居ない相手に何度も頭を下げている。仕事とはいえ気の毒だな、と思った。

彼が携帯電話を持つ反対の手にはソフトクリームが握られていた。おそらく購入した直後に電話が掛かってきたのだろう。

彼は謝罪相手のまくし立てるような怒号が鳴り止むその一瞬の隙を突きながら、猛烈な勢いで溶け出すソフトクリームをペロ、ペロ、、と舐め続けた。相手には一切悟られていない。

そのあと俺もソフトクリームを食べた。

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