勝手にしたいの

  • 2020年5月23日
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「あ、今週のデッドです」
LINEのメッセージが送られてくるとあぁ、もう1週間たったのか、と思う。

音楽仲間の友人U氏が毎週、The Greatful Deadのおすすめ音源を送ってくれる。

私はグレイトフル・デッドをあまりよく知らない。U氏はよく知っている。彼はThe Greatful Deadのライブを観る(そして”体験”する)為にアメリカに行くほどのデッド・フリークだ。
私はただデッドを知らないだけであり嫌いなわけではないので、こういった存在は非常にありがたい。
色々と教えてもらうまではただ漠然と、サイケデリックでヒッピーなへろへろしたバンドだと思っていたが(そういうのも好きだが)、実際聴いてみると音は全くへろへろしておらず、どっしりと腰の据わったリズムと厚みのあるサウンドが癖になる、「そのままいつまでもやっていてくれ(嘆願)」系のバンドだった。好き。

今週のデッドに対し私は「今週の小三治」として十代目 柳家小三治(やなぎやこさんじ)の落語を紹介している。
初回はその日が暑かった事もあり、「青菜(あおな)」という噺を紹介した。とても気に入ってくれたようで、以後The Greatful Deadと柳家小三治の交換会は続いている。

知らなかったものを教えてもらって好きになる、というのはとてもいい。この為に生きていると言ってもいいかもしれない。人生の、うんめぇ味がするところ、という感じがする。醍醐味。
と同時に、難しさもある。
「自分が好きなものを他人に好きになってもらう」というのは実際、すごく難しい事だと思うのだ。

私の場合、「がっつりしたコミュニティ」が見えると、結構引いてしまう。ファン同士が手を取り合い、肩を組みながら「君も仲間になろうよ!」とか言われる雰囲気がかなり苦手だ。いや、ここまでガツガツしているのはあまり見かけないかもしれないが、例えばSNSで知ったバンドの投稿にコメントしたとして、即時、バンドではなく”ファン”から「はじめまして!!〇〇いいですよね!〇〇をよろしくお願いします!!」と返事が来たらたぶん、引く。そこに悪意は無いぶん、悲しいのだが引いてしまう。
同人文化(ファンコミュニティ)とムラ社会構造は紙一重というか、表裏一体の関係にあると思う。好意のつもりが同調を強要していたり、仲間と楽しんでるだけのつもりが排他的になっていたり、非常に危うい。
「自分はどう好きになったか」と「この人はどう好きになるか」のふたつの視点、想像力を持たず、他人に何かを勧めるのは結果的にファンを減らす事に繋がりかねない。

私は人にものを勧めるとき、「皆それぞれ勝手に好きになっている」というニュアンスを大切にしている。
そのニュアンスが「世の中的に価値がなかろうが、周りに同志が居ようが居まいが、わたしはそれが好きなんだ」という納得感を生みだすと信じているからだ。
コミュニケーションツールの発達により「繋がりやすく、マッチングされやすく」なった現代において、「勝手に好きになっている納得感」は自分を自分たらしめてくれる、貴重なものだと考えている。
個人の時代と言われて久しいが、実際個人はどんどん統合されているように感じる。
私も例外なく、統合されている。自分の意見を述べているようで述べさせられている。圧縮され、タグを付けられ、均等なデザインで陳列されている。冷静に考えると、人の意見が同じフォント、サイズで表示され、そこに数値が付くって、とんでもない事だと思う。
私はそんな世界を変えようとは思わない。ただ、その世界で少しでも、自分が生きている実感が欲しい。ひねくれた逆張りでも反抗心でもなく、もっとあらゆる事を「勝手にしたい」。だからこそ余計に、ムラ的な空気に敏感になり、繋がりすぎる事を危惧するのだと思う。

小三治師匠の落語を聴いていると、笑えるアレンジも多いが、噺そのものの面白さがスッと入ってくる。聴いたあと「あー、面白い噺だった」と思えるのだ。「この人面白いな」とか、「さすが上手いな」ではなく「面白い噺だった」と思える。
「面白い人であること」よりも「噺の面白さを伝えること」に重きを置いている、と言うべきか。
私はここに、「自分が好きなものを他人に好きになってもらう」事の本質があると思う。ただ噺の面白さを伝える事が、結果的に落語好きを生んでいる。
誤解を恐れずに言うと、「落語好きに向けられていない落語」という感じがするのだ。その声やしぐさには、落語好きというコミュニティ、そのムラの外側に訴えかけるような、何とも言えない軽やかさがある。だからこそ、何も知らなかった私は勝手に好きになれたのだと思うし、十代目 柳家小三治は人間国宝にまでなったのだと思う。

 

私もU氏のデッドみたいに、小三治師匠の「青菜」みたいに、自分の好きを伝えられているだろうか。

このブログでドン引かれてたら笑っちゃうな。

 


そしてすでに話題騒然ですが、いま最もチケットが取れない落語家、春風亭一之輔。感染症の煽りを受け全公演開催中止となったその寄席がYouTubeオンライン生配信されてますね、10日間連続。
4月後半にやった第1弾に続いて、5月21日から再び10日間。
初日観ましたが、今回からトリ前の色物もついて、林家正楽師匠が紙切りやってましたね〜、いやもう寄席でしたね。すばらしい。あ、でも今アーカイブ観たら紙切り部分無かったんで、生だけの特典のようです。

今日の江戸家子猫さんも観たかったけど私は見逃しました。明日は生で見たいなぁ。