公園の粘土細工みたいなベンチでボーっとしてると、主婦3名が
健康に関する情報を開示しあうのが聞こえてきて、俺は
耳を澄ますでも無く、ボーっとし続けようとしたんだけど出来なかった。
マーガリンの危険性。
トランス脂肪酸。
食べるプラスチック。
その主婦3名にとってそういった情報はさして新しいものではないらしく、今回の井戸端会議は情報交換というよりも確認作業に近いようだ。
上のワードが出てくると「そーうそう」「んねー」「こわー」など合いの手が入る。
この瞬間に俺が宣教師として立ち上がれば
「さしずめそれは食べるプラスチック!」
「そーうそう!!!」
「トランス脂肪酸!」
「じーざす!!!」
「バターの名の下に!」
「サンライズ!!!」
みたいに出来たんだろうか。
対象を悪くいう時ってネーミングセンスが光るみたいだ。「食べるプラスチック」て。個人的にお気に入りである。
逆に
「いよいよプラスチックは食べられる所まで来た。いでよマーガリン」じゃダメなのか。
塑性を持ったその分子構造がプラスチックに似ているだけだから、比喩の深さとしては「鬼のように」レベルかもしれないぞ。鬼のようなマーガリンよ。
地下2階は規則正しく振動している。青と緑の光線渦巻くクラブで、重力を無視したヘアスタイルの華奢な女がジンを運んでくる。「あははサービスなんだってあはは」誰のサービスかは踊るのに関係ないから頂こう。そのショットグラスのふちに塗られた乳白色の物体。でっかい声で聞く。「何これ?」
女はサッと近づき、ほとんど俺の耳にくちびるを付けながらささやく
「食べるプラスチックですの」
みたいな感じで落ち込んだ消費をV字回復できないだろうか。落ち込んだ消費をぶいじかいふくって何様のつもりなんだろうね俺は。
やなせたかし的にはマーガリンナちゃん。
バタCo.さんは、いじわるこそしないけれどやはりマーガリンナちゃんを下に見ている節がある。
それを見て見ぬ振りしてジャムtheおじさんは刻む。
金の無いマスにパン届けたい その為のマーガリン その為のソルビトール
誰が為にパンは焼き上がんだ? (Ah huh) 損か得かが添加されたマインド
だから目にちゃんと焼き付けんだ (Ah yeah) 損か得かが天下のワールドin仮想
ほら新しい顔だよ〜
ほら新しい顔だよ〜
俺はただ三千里先にパン届けたい
無添加食いたきゃ此処まで来い
口にねじ込む 背骨を伝う
腰から砕けるアンのパン (ぱん)
我が魂のアンのパン (ぱん) 食いな
俺は給食でマーガリンが出てきても、封を切らずにつまんでうりうりうりうりして柔らかくする遊びをしていたし
パンより米が好きだからマーガリンの事はやっぱりわからない。
ごめんねマーガリンナちゃん、
俺が出来るのは公園のベンチでボーっとする事だけだ。