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手術しました

 

写真や動画を編集していると、嫌でも自分の顔を凝視することになる。

 

そうしてる内に、自分の顔面上のある変化に気づいた。

 

 

 

口元に、吹き出物らしき膨らみ。

 

日々不安定な食事をしている自分にとって、吹き出物はさして珍しい事ではない。だがこの膨らみは「けっこう前からずっとある」事に、いま気がついた。

周りの皮膚が再生を繰り返す中、この「しこり」が消えることはなかったようだ。痛みはなく、コリコリしている。

静かに、だが確実に成長しながらそこにいる。

 

気になって調べてみると、これは吹き出物やニキビとは違い「粉瘤(ふんりゅう)、アテローマ」という腫瘍らしい。

皮膚科界隈ではわりとポピュラーなもので、発生原因は解明されておらず、数十分での除去手術が可能。

たしかに皮膚科のホームページを見ると、ほくろやいぼを除去するのと似たノリで紹介されている。どうやら悪性の腫瘍ではないようだ。よかった。

そして手術方法は「局所麻酔をし、パンチのような器具でごく小さな穴を開け、内容物を摘出する臍(ほぞ)抜き法が主流」とのこと。

 

ほ、ほぞぬきほぅ。

パンチのような器具で穴を、、

意識のある中で、、

 

やってみたい、、、!

 

電話予約をし、あっという間に手術当日。

初めて美容院に行った時と同じ種類のわき汗をかきながら診察室へ。

医者は思っていたよりずっと若く、PCのモニターを覗く姿はパチスロにのめり込む大学2年生のようだ。ひとしきり触ったり照らしたりしたのち

「じゃあね、吉原さん、きょう取っちゃいますかぁー」と言った時にはさすがにちょっと不安が。趣味で出してるラーメンがおいしいと評判の立ち飲み屋か。だが気分的には妙に興奮しているので、ちょりっす、ガーゼ増し増しでおねげしやーすと返しそうになる。

 

手術をする部屋へ移動。

手術室 というよりは選手控え室のような、がらんせまい部屋でサッカー部のマネージャー風女性看護師にあらためて手術の説明を受ける。簡易的なベッドにふたり並んで腰掛け、これからの手術について話し合っていると「よし、じゃあこの試合で君のために必ずホームランを打つからね」という気分になってくる。サッカー部のマネージャーにだ。違う、看護師にだ。

ベッドに仰向けになる。

医者登場。

「ベッドあげまぁす」

簡易的な外装とは裏腹に、ベッドは極小のモーター音を立てながらシームレスに上昇した。天井のLEDライトが近づく。目隠しとして大判のガーゼを顔に載せられ、美容院的わき汗はサスティナブルに分泌した。

「じゃ、麻酔しまーす。ちょっと痛いでーす」

ぶすぶすと麻酔を打ち込まれながら思う。美容院というよりこれはどちらかというと歯医者的なシチュエーションではないか。

親知らずを抜いた時みたいに、「意識があって無痛で血みどろなフランケンシュタイン感」が共通している気がする。それを楽しみに来ている自分を静かに戒めた。

 

「じゃ、はじめまーす」

患部を器具で引っ張られている感触があるが、そこはもう何も感じない。狐につままれたみたいだ。

穴を開けたのか?つまんだのか?切ったのか?あれパンチのような器具は?”はいこれがパンチのような器具でーす”って見せろっ!”こちらが出来上がりのものでーす”ってオーブンから取り出せっ!俺にっ!見えないっ!美容院の時は目隠しズレるのにっ!

摘出がはじまる。

患部をひっぱり、

チョキチョキチョキ、、、

 

えっ。

なんかチョキチョキきこえるんですけど。

穴から絞り出すor吸引するのをイメージしていたので、その落差に思わず笑ってしまった。

「大丈夫ですか!?痛かったですか?!!」

俺のクックッ、という挙動に医者と看護師は慌てた。けっこう大事な場面らしい。

「いやあのチョキチョキ、、きこえて、、、おもしろいなって」

「づふ」

看護師は吹き出した。

一般的に手術中の患者を笑うのは失礼だが、気持ちはわかる。目隠しして顎の上んとこ切られてる人が「チョキチョキおもしろい」とか言ってたら何かしらこみ上げてくるものはあると思う。

それに対して医者はどうだ。吹き出すどころかクスリともしやがらねえ。マジメか。ごめんなさい僕が悪かったです。

 

 

茫漠としたチョキチョキ音に笑いを堪えながら、手術も終わりに近づいていく。

ふたたび、医者と看護師は慌てた。

首元のタオルが交換され、患部に何かを押し付ける、を繰り返している。どうやら結構な量の出血をしているよう。

「だいじょうぶですかー気分悪いとかないですかー」

「ないでーす。けっこう出ちゃってます?」

「、、、だいじょうぶですからねー」

大丈夫ですからねーほど不安を煽る言葉はないが、大丈夫ですからねーとしか言えない状況は人生に多い。

その後計4回、ダイジョブデスカラネを頂戴し、最終的に俺はパチスロ医者に同情さえした。

 

でっかいガーゼでぐいっと蓋をし、手術終了。

「おつかれさまでしたー」

立ち上がるとクラクラする。

同じ笑いを分かち合った看護師と試合後のヒーローインタビューです。

「気分悪いとかないですか?」

「ないれす」

「今日は飲酒と入浴は厳禁ですので注意してくださいね」

「ひゃい」

「感染予防でお薬出ますんで受付で処方箋受け取ってください」

「ぷい」

「お大事になさってください。おつかれさまでした」

「ほむ」

 

 

支払いを済ませ処方箋を受け取り、薬局で薬を受け取り、思った。

血が、足りない。

 

うおお何か血となり肉となるものを俺にくわせろ。

定食屋にゆらりと近づき、入店。

「れぱにらてーしょくくらはい」

それがほんとに血になるのかはかなり怪しいが、レバーを食べることしか頭にないくらい貧血だ。

出来上がり。

プリプリのレバーを箸で持ち上げ口に入れようとしたそのとき、異変に気づく。

でっかいガーゼで口が半分も開かない。

レバニラのたれがポタポタ落ちた。

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